2006年09月04日
是非伝えたい言葉(宋文洲さんの退任の弁)
ソフトブレーンの宋文洲さんが退任の弁を発表しました。ごらんになった人も多いと思いますが、僕自身が最近最も感動したメッセージとしてこのブログに残したく、全文を以下に引用させていただきます。こういう素晴らしい経営者の引き際の台詞を聞かせたい老害が何と多いことか。
「退任の弁・最後の経営判断、自分を辞めさせること」
先週木曜日(8月31日)、私は14年間務めたソフトブレーンの取締役を辞任しました。札幌の地で一人から創業したソフトブレーンは一部上場企業になり、公器として日本社会に完全に引き渡されることになりました。
私はまったく偶然のきっかけでソフトブレーンを創業しました。就職した小さな会社がすぐ倒産したからです。もちろん再就職する選択もありましたが、残業と接待の多い日本のサラリーマン生活を見て再び就職する気がなくなりました。
こんな前向きとはいえない姿勢で創業したソフトブレーンはたまたま最初の製品がヒットし、今のソフトブレーンの基礎を築くことができました。私は志がないままビジネスをはじめましたが、多くの顧客と社員と知人に出会うことができ、人の繋がりもできました。
彼らとの出会いと付き合いを通じて私は変化し、発見し、成長してきました。経営者としての自覚が芽生え、社会への責任感が育ちました。負けず嫌いの性格も相まって私は中途半端な形で経営を辞めたくありませんでした。
2005年にソフトブレーンは一部上場することができました。まだ小粒の会社ではありますが、透明性、正規性、利益、財務、人材などの面において一部上場企業の基準をクリアできたということが証明されました。ソフトブレーンが社会に十分通じる公器になった今が、私が創業者としての役割を終える良いタイミングだと思います。
よく「もったいない」とか「もっとやるべき」とか言われますが、創業に必要な才覚と企業を大きくするための才覚はまったく別なものです。両方をもっている方もいるでしょうが、少数だと思います。残念ながら自分はその少数に属していない自覚をしっかり持っております。
しかし、ある程度の経営実績を積み上げますと経営者は自然に自信を持ち、すっかり何でもできる気分になってしまいます。周りの人々も経営者を「尊敬」し、意見を言わなくなり、特別な存在として勝手に配慮するようになります。行き先に赤い絨毯を敷いたり、役員室にシャワールームを設置したりします。
社長はやっと手にした優雅な地位ですから、できるだけ長くやりたくなります。そして社長を退任したら今度は会長を長くやります。会長が終わると名誉会長になり、名誉会長が終わると顧問になり、顧問が終わると名誉顧問になります。ある会合で「代表取締役名誉会長」の名刺を頂いた時、さすがに私は絶句しました。
名誉会長も名誉顧問も見晴らしのよいところに広い部屋を持ち、高級車と秘書を持ち、料亭で部下や業者のお世辞を聞きながら美味しい仕事をします。辞めることはつまり普通になることです。この普通になることはトップを長く務めた人にとって恐怖に感じることが多いと思います。
私が取締役を辞めたことで「淋しくないか」とか、「この先、権力を捨てた落差を実感する時が必ず来るでしょう。その時、どう対処されるか」とか、心配してくださる方々がたくさんいます。経営者と社員は対等な関係を築くべきだと私はずっと思い、ずっと主張してまいりました。ソフトブレーン社内では役員室がないだけではなく、役員の固定席もありません。役員も社員もフリーアドレスで気がついたら新入社員の隣に役員が座っています。今日のこのコラムも適当に見付けたテーブルで書いており、僕の目の前に入社4年目の企画部に所属する社員が座っています。
普段から偉くないという心構えと言動を保て、特別扱いを拒否すれば社員の意見を聞きやすいだけではなく一個人としての生存力が高まると思います。権力と地位は魅力的ですが、一度中毒になればなかなか脱出できないため逆に権力と地位の囚人になってしまうと私は思います。
さらに、カリスマ経営者がずっといると「下で働きたい」人材だけが残ります。リーダーとなって新たな地平線を切り開きたい人は来なくなります。宋文洲がずっとソフトブレーンのトップを務めると宋文洲こそソフトブレーンの最大の阻害要因、最大のリスクとなってしまいます。
非常に才能と自信のある経営者ならこのような心配はないかもしれませんが、私のような偶然に経営の道に迷い込んだ凡人はとても心配です。だから辞めても大丈夫な会社にした後、自分を辞めさせることを最後の経営判断にしたいと思ったのです。
[2006年9月4日]
2006年09月04日 16:35
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コメント一覧
<最後の経営判断>ですか、、、
うーん、恰好いい!テイクノートします!(沖縄・佐藤)
投稿者: Anonymous | 2006年09月04日 21:35